サラリーマン生活35年、そろそろ定年後、第二の人生を考えるには遅くない私は、全国展開をしている我社のエンジニアの技術指導をしています。
恋の神様は気まぐれで、30年ぶりの胸の騒めきを与えてくれた。
それは、9月、残暑というより真夏のような暑い季節にK県の海岸近い工場で勤務をしていた時のエピソードです。
華奢な身体にシャープな動きが目に留まり、決して器用ではない彼の姿に何かを感じて
後ろから声をかけると、若い男子と思い込んでいたが、なんと女子でした1
入社2年目、エンジニア希望で名前は○○千絵さん。
我社のクラブ活動である駅伝部のメンバーであることがわかりました。
ショートカットで作業着と作業帽子の姿は男子にしか見えず大変、失礼と思ったが、彼女曰く、何度も男子と間違われるそうだ。
その日から妻と晩酌時に千絵の話をしていると「最近、千絵ちゃんの話ばかりしている」と怪しそうな目で言われてしまい、息子と同い年の女性に恋心なんてあり得ないと思いましたが、千絵のことが頭から離れない自分にも「本当に恋してないのか?」と自問自答をしていました。
そして気づきました。
あり得ないと思っていましたが、私は自称、アクティブシニアで、休日にはロードバイクで中距離サイクリングを楽しんだり釣りをしたりして過ごすことが多く、千絵を含めた数人の有志で週末をすごすことが多く、自然と千絵と2人で過ごすことが多くなり、
駅伝大会の予選で敗退した時の飲み会で、あろうことか千絵に告白をされてしまいました。
妻子ある私は、心の中では嬉しくて、その場で千絵を抱きしめたかったが、若い千絵の将来を考え、そして30年の結婚生活で浮気など考えたことがなかったので、どう対処をしたらよいのか、わからなく挙動不審な態度で、「とりあえず落ち着いて考えて」と千絵をなだめたが、居酒屋のトイレの前でキスをされてしまい、拒むこともできなかったのです。
その夜は帰宅して妻の顔を見ることが出来ないと思い、自宅に帰るふりをしてタクシーで、ビジネスホテルへ向かい、1人で冷静に考えた結果、答えは出ないまま、週末のサイクリングには参加をしたが、千絵とも普通に接することが応えと思い、そのまま、他の工場へ移動することになったのです。
4年前の夏、私は確かに恋をして、中途半端に終わらせた恋愛下手なオジサンと思いながら妻と晩酌をしています。